1. 病気の概要
- **軟部組織肉腫(Soft Tissue Sarcoma; STS)**は、皮下や筋肉、脂肪、血管周囲の間葉系組織にできる腫瘍です。
- 悪性腫瘍ですが、転移は比較的ゆっくり進む傾向があります。
- 目に見えるしこりよりも体内で広がっていることがあります。
2. 症状
- 触ると固いしこりがある
- 痛がることは少ない
- 大きくなると歩きにくさや動作の制限が出ることがある
- 食欲・元気は通常維持されることが多い
3. 診断方法
- 触診・問診:しこりの位置・大きさ・発生時期の確認
- 細胞診(FNA):腫瘍が良性か悪性かを大まかに判断
- 組織診(生検または切除後の病理):悪性度(グレード)や再発・転移リスクを判定
- 画像検査(X線・CT・MRI):腫瘍の広がりや肺転移の有無を確認
- ステージング:腫瘍の大きさ・部位・転移の有無を総合的に評価
4. 治療方法
外科手術
- 最も基本かつ重要な治療
- 腫瘍を「完全に取り切る」ことが目標
- 不完全切除だと再発リスクが高くなる
- 部位によっては断脚など広範囲切除が必要な場合もある
放射線治療
- 手術後の再発防止や、手術が難しい場合の代替治療として行う
化学療法
- 高グレード(悪性度が高い)や転移がある場合に検討
- 使用例:ドキソルビシンなど
その他・研究的治療
- 電気化学療法(ECT)、局所注入療法など
- 現時点では標準治療の補助として検討される段階
5. 予後の目安
- 低グレード・完全切除:長期生存が期待できる
- 高グレード・不完全切除:再発・転移リスクが高くなる
- 予後は「腫瘍のグレード・大きさ・切除マージン・部位・再発歴」によって変化
6. 術後フォロー
- 最初の2年間:3か月ごとに触診+胸部画像
- その後:半年〜1年ごとに検診
- 早期再発を発見することで治療効果が上がる
7. よくある質問(Q&A)
Q1:腫瘍を切れば完全に治る?
A1:腫瘍の悪性度や切除の完全性によります。完全切除が成功すれば再発リスクは低くなります。
Q2:手術以外で治せますか?
A2:放射線治療や化学療法は補助療法で、単独で根治を目指すことは基本的に難しいです。
Q3:生活に制限はありますか?
A3:小さな腫瘍では生活に大きな影響はありませんが、大きな腫瘍や手術後は歩行や運動に注意が必要です。
Q4:費用はどれくらい?
A4:手術・麻酔・病理検査・画像検査で数十万円〜が目安です。放射線や化学療法を組み合わせる場合はさらに費用がかかります。
8. 飼い主様へのメッセージ
- 早期発見・早期治療が再発や転移のリスクを下げます
- 治療方針は「腫瘍のグレード」と「切除の完全性」が鍵です
- 治療内容・費用・生活の質について、率直にご相談ください