はじめに
腫瘍(しゅよう)と診断されたとき、「抗がん剤ってつらいのでは?」「副作用が心配」「うちの子に必要なの?」「高齢でもできる?」など、不安や疑問を感じられると思います。
このページでは、犬や猫の腫瘍に対する抗がん剤治療(化学療法)について、目的・メリット・デメリット・適応(勧められるケース)を、できるだけ分かりやすくご説明します。
※実際の治療方針は、腫瘍の種類・進行度・年齢・基礎疾患などによって異なります。最終的には個々の状態に合わせてご提案します。
抗がん剤治療(化学療法)とは
抗がん剤治療(化学療法)とは、がん細胞の増殖を抑える薬を使い、腫瘍を小さくしたり、進行を遅らせたりする治療です。
腫瘍の種類によって目的は異なりますが、主に
- 腫瘍を小さくする
- 再発・転移を抑える
- 症状を和らげ、生活の質(QOL)を保つ
といった目的で行われます。
※動物の抗がん剤治療は、人のように「強い副作用を我慢してでも治す」ことを目指すというより、副作用をできるだけ抑えながら、普段の生活を守ることを重視する場合が多いのが特徴です。
抗がん剤治療のメリット
① 手術では届かない「全身のがん」にアプローチできる
抗がん剤は血液を通じて全身に作用するため、
- 目に見えない微小な転移
- すでに全身に広がっている可能性のある腫瘍
に対して治療できる可能性があります。
② 腫瘍を小さくし、症状を軽減できる場合がある
腫瘍の種類によっては、抗がん剤により
- 腫瘍が小さくなる
- 痛みや圧迫症状が軽くなる
- 食欲や元気が戻る
など、生活の質(QOL)の改善が期待できることがあります。
③ 手術後の再発・転移リスクを下げられる場合がある
悪性腫瘍では、手術で腫瘍を取り切れたように見えても、体内に見えないがん細胞が残っている可能性があります。
そのため、手術後の補助療法(再発予防)として抗がん剤を併用することで、予後改善につながる場合があります。
④ 「治療の選択肢」が広がる
腫瘍の治療は、手術だけで完結するとは限りません。
抗がん剤治療を取り入れることで、
- 手術が難しい腫瘍への対応
- 放射線治療との併用
- 緩和ケアと組み合わせた治療
など、その子に合った治療の幅が広がります。
抗がん剤治療のデメリット・注意点
① 副作用が出る可能性がある
抗がん剤治療では、体質や薬の種類によって副作用が出ることがあります。
主な副作用として
- 食欲低下
- 嘔吐・下痢
- 元気がない
- 白血球の低下(感染に弱くなる)
などが挙げられます。
※副作用は必ず起こるわけではなく、軽度で済む子も多いです。
※当院では状態を確認しながら、投与量や間隔を調整し、副作用を最小限にするよう配慮します。
② 定期的な通院・検査が必要
抗がん剤治療は1回で終わる治療ではなく、複数回の投与が必要になることが多いです。
安全に治療を続けるために
- 血液検査
- 体調チェック
などを定期的に行います。
③ すべての腫瘍に効果があるわけではない
抗がん剤の効果は、腫瘍の種類によって大きく異なります。
そのため、
- 効果が期待できる腫瘍
- 効果が限定的な腫瘍
があり、治療の目的を明確にした上で選択することが大切です。
④ 完治を目指す治療ではない場合もある
腫瘍の種類や進行度によっては、抗がん剤治療が
- 完治を目指す治療
ではなく - 病気と付き合いながら進行を遅らせる治療
になることもあります。
「どこまで治療を行うか」は、ご家族の考え方も含めて一緒に相談しながら決めていきます。
抗がん剤治療が勧められる主なケース(適応)
以下のような場合、抗がん剤治療が選択肢となります。
- 抗がん剤が効きやすい腫瘍(例:リンパ腫など)が疑われる/診断された
- 手術が難しい部位の腫瘍
- すでに転移がある、または転移リスクが高い腫瘍
- 手術後の再発・転移予防として治療を検討したい
- 痛みや症状を軽減し、生活の質(QOL)を保ちたい
手術以外の治療との併用
腫瘍の種類によっては、
- 外科治療(手術)
- 放射線治療
- 緩和ケア(痛みの管理)
などを組み合わせて治療を行うことで、より良い結果が得られる場合もあります。
「抗がん剤をする・しない」の二択ではなく、
その子に合った治療の組み合わせを一緒に考えていきます。
飼い主さまへ
抗がん剤治療に対して、「つらい治療ではないか」と心配される方は多くいらっしゃいます。
しかし獣医療では、副作用をできるだけ抑えながら、その子らしい生活を守ることを大切に治療を行います。
腫瘍の治療に「正解」は一つではありません。
- 年齢
- 性格
- ご家族の考え方
も含めて、納得できる治療を選ぶことが何より大切です。
栄どうぶつ病院では、メリットだけでなくデメリットや限界も正直にお伝えし、
飼い主さまと一緒に治療方針を決めることを大切にしています。
気になること、不安なことがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。
※本ページは一般的な情報をまとめたものです。個々の症例については診察・検査の上でご説明いたします。