1. 病気の概要
脂肪腫は、皮膚の下にある脂肪細胞が増えてできる良性腫瘍です。
犬で多くみられ、中高齢になるほど発生しやすい傾向があります。
脂肪腫は基本的に転移することは少なく、ゆっくり大きくなることが多い腫瘍です。
ただし、見た目や触り心地が似ている別の腫瘍があるため、「脂肪腫っぽい=確定」ではありません。
似た病気・鑑別が必要なもの:
- 脂肪腫(良性)
- 浸潤性脂肪腫(周囲に入り込むタイプ)
- 脂肪肉腫(悪性)
- 皮膚の他の腫瘍、炎症性のしこり(膿瘍など)
脂肪腫は良性が多い一方で、場所や大きさによっては生活の邪魔になるため、治療が必要になることもあります。
2. 症状
- 皮膚の下にやわらかいしこり(ぷにぷに)ができる
- 触ると皮膚の下で動く感じがあることが多い
- 多くは痛みやかゆみは少ない
- ゆっくり大きくなる
- 1個だけの場合も、複数できる場合もある
大きくなると
- 歩きにくい(足の付け根、わきなど)
- 服やハーネスが当たって擦れる
- 皮膚が引っ張られて違和感が出る
など、日常生活に支障が出ることがあります。
3. 診断方法
視診・触診
しこりの位置、大きさ、硬さ、動き、皮膚との癒着の有無を確認します。
細胞診(FNA)
針で細胞を採取して顕微鏡で確認します。
脂肪細胞が主体であれば脂肪腫が疑われます。
ただし、脂肪由来の腫瘍は細胞診だけでは判断が難しいこともあります。
組織検査(生検または摘出後)
最終診断には病理検査が必要です。
脂肪腫なのか、浸潤性脂肪腫や脂肪肉腫など別の病気なのかを区別します。
画像検査(超音波・X線・CTなど)
大きい腫瘤や深い場所にある場合、
筋肉への入り込み(浸潤)や広がりを評価する目的で行います。
4. 治療方法
経過観察
脂肪腫は良性が多いため、
- 小さい
- 変化が少ない
- 生活に支障がない
場合は定期的なチェックで経過観察が可能です。
外科手術
以下の場合は外科的切除が推奨されます。
- 大きくなってきた
- 急に増大した
- 歩行や生活の邪魔になる部位にある
- 皮膚が擦れて炎症・出血を起こす
- 悪性が否定できない
- 浸潤性脂肪腫が疑われる
脂肪腫は摘出できれば完治が期待できますが、
浸潤性脂肪腫では取り切るのが難しく、再発のリスクが上がります。
薬物療法
脂肪腫そのものを確実に縮小させる薬は基本的にありません。
炎症や皮膚トラブルがある場合は、対症療法(消炎・抗生剤など)を併用します。
5. 予後の目安
良性腫瘍(脂肪腫)の場合:
→ 摘出できれば予後は非常に良好。再発は少ないです。
ただし体質的に
→ 別の場所に新しい脂肪腫ができることはあります。
浸潤性脂肪腫の場合:
→ 周囲組織に入り込むため、再発しやすく治療難度が上がることがあります。
脂肪肉腫など悪性が疑われる場合:
→ 追加検査・追加治療が必要になることがあります。
6. 術後フォロー
- 手術部位の腫れ・出血・感染がないか確認
- 傷を舐めないようエリザベスカラーや術後服を使用
- 抜糸までの安静(運動制限)
- 大きな脂肪腫を取った場合は、皮膚の下に**液体が溜まる(漿液腫)**ことがあり、経過観察や処置が必要になることがあります
- 病理結果の確認(良性かどうか、取り切れているか)
7. よくある質問(Q&A)
Q1:脂肪腫は放っておいても大丈夫ですか?
A1:小さくて変化が少なければ経過観察できることが多いです。ただし大きくなると生活の邪魔になるため、定期チェックが重要です。
Q2:痩せたら脂肪腫は消えますか?
A2:体重管理は大切ですが、脂肪腫自体が消えることは少ないです。ただし肥満は他の病気リスクも上がるため、適正体重はおすすめです。
Q3:脂肪腫は悪性になりますか?
A3:典型的な脂肪腫は悪性化しにくいです。ただし、最初から別の腫瘍(脂肪肉腫など)の可能性があるため、検査で確認します。
Q4:何個もできることはありますか?
A4:あります。特に犬では複数できる体質の子もいます。
Q5:手術が必要になるのはどんな時?
A5:急に大きくなる、邪魔な場所にある、皮膚トラブルが出る、悪性が否定できない場合などに手術を検討します。
8. 飼い主様へのメッセージ
脂肪腫は多くが良性で、命に関わることは少ない腫瘍です。
ただし、しこりは見た目だけでは判断できないため、まずは病院で**細胞診(針の検査)**を行い、脂肪腫かどうかを確認することが安心につながります。
小さいうちは経過観察でよいことも多いですが、
大きくなると生活の邪魔になったり、手術の負担が増えることがあります。
「大きさの変化を記録する」ことがとても大切ですので、気になるしこりがあれば早めにご相談ください。